ニート in パリ - 行けっ森蔵!

偶然フランスはパリに移住することになった30代女子の生活。なぜか画家のベルト・モリゾに惹かれている。

指輪物語とホビットの冒険とマーティン・フリーマンと

夏休みの海外旅行の際、トルコ航空で私の大好きな映画を発見してしまった。ピータージャクソンの指輪物語シリーズだ。高校生の頃に映画館で見て、面白さに取り憑かれてしまった。3シリーズ全て映画館で見たし、その後図書館で指輪物語の本も読んだ。話がすごく長く(これが本当の「労働オブ・ザ・リング」だ)、登場人物は多く、また映画と比べる人物の描写がいささか単純だったのを覚えている。映画と比べると、原作では過去の出来事や人間関係や劣等感によって深刻に思いつめている人物はほぼおらず、よって誰も人を裏切ったり意地悪せず「みんな良い人」だった。悪役のサウロン、サルマン、ゴブリンやオークはただ単純に悪いだけで、味方はとにかく「良い人」。これはこれで昔のハリウッド映画みたいですっきり気持ちよくて良い。そのおかげで映画の面白さが際立った。ピータージャクソン最高。絶対ニュージーランドホビット庄に行くぞ!と高校生の私は思った。その夢を叶えようと先日ツアーを探し、会社の人事システムから来年の有給を申請した。ツアー代は10日間で40万。ちーん。緊縮財政をしかなければいけない。

 

飛行機の中ではホビットの冒険を見た。BBCのドラマ「Sherlock」でマーティン・フリーマンの演技のうまさに感動してからというもの(「フツウの人」を演じたらピカイチだと思う)、ホビットの冒険も見なくてはと思っていた。案の定、演技がすごかった。マーティン・フリーマン演じるビルボのホビット穴でのシーンでの立ち回りが「ロード・オブ・ザ・リング」のビルボ役のイアン・ホルムの動きにそっくりなのだ。「Sherlock」でのワトソンの動きと全く違ってびっくりした(役が違うから当然かもしれないが)。マーティン・フリーマンのお陰で物語が面白く感じられた気がする。「ロード・オブ・ザ・リング」ではレゴラス役のオーランド・ブルームがひたすら美しく、「パイレーツ・オブ・カリビアン」もオーランド・ブルーム目当てで見たが、残念、オーランド・ブルームのお陰で物語が面白くなることはなかった。。。演技の上手い俳優が物語自体を面白くしてしまうのに気がついたのは、「食べて祈って恋をして」だった。原作の”Eat, Play, Love”を(内容はお決まりだなと思うものの)楽しく読み、映画もレンタルで見てみたが、軽いノリの海外ドラマか観光ビデオを見ているかのようで全く面白くなかった。しかし、映画後半でアカデミー俳優ハビエル・バルデムが出てきた途端、一級のヒューマンドラマになってしまった。映画のあまりの変わりように、同居人と目を丸くしたのを覚えている。

マーティン・フリーマンの演技で面白くなった映画「ホビットの冒険」の一話目を見た後で、単行本をアマゾンで買って読んだ。後ろには「小学5・6年生以上向け」と書いてあり、アマゾンのレビューでも子供向けと書いてあったが、ところがどっこい、内容は完全に大人向けなのである。ドワーフの現金な性格や、当初足手まといだったビルボが使えるヤツだとわかってからの身の返し様、当初自信がなかったビルボがドワーフに次第に頼られていくうちにドワーフを多少「ウザい」と感じてしまうところ、ドワーフバーリンがビルボの人柄に心から感動してビルボと後々も仲良くなるところ、旅から帰った後ビルボの故郷のホビット庄の人々からは(ホビットは普通であれば旅などしない民族なので)一生変人扱いされるところなど、むしろ職場の人間関係や現実の近所づきあいに近いようなリアルな人間模様なのだ。登場人物同士の絡みが妙に現実味を帯びていて共感をよぶ。また、物語の展開のテンポもよく、飽きることのないボリュームもちょうど良い。気がついたら通勤電車で数日ゆられながら単行本上下巻を読み終わってしまっていた。ここまで面白いと「指輪物語」より面白いかもしれない。まるでのちのち大物になるバンドのファーストアルバムを聞いた後のような衝撃だ。Wikipediaによると、トールキンの「ホビットの冒険」がヒットした後、出版社が続編の要望をだし、「指輪物語」が出来たのだそうだ。納得だ。

 

肝心の「ホビットの冒険」の映画はAmazon Primeでまだ二作目をレンタル中だ。原作と話が結構違うため戸惑うが(原作のようにビルボをもっと活躍させてほしい!)、これはこれで別物という感じだ。原作はビルボが主人公だったが、映画はどちらかというとドワーフに焦点が当たっている感じか。ピーター・ジャクソンへの尊敬はまだ消えてない。