ニート in パリ - 行けっ森蔵!

偶然フランスはパリに移住することになった30代女子の生活。なぜか画家のベルト・モリゾに惹かれている。

フランス人は脱力気味?

パリもすっかり冬のようになってきて、朝の気温は7度だ。


 夏は日がびっくりするほど長くて、夜22:00くらいまで明るいこともあったが、今は17:00には真っ暗だ。これだと日が落ちるのが日本より早い感じがする。

 9月に入学したジュエリー学校も2ヶ月が経ち、やっとフランススタイルの教育にも慣れてきた。

 やっぱり日本式の「全部何でも教えてくれる教育」が好きだけど、仕方ないや。

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 先月から一般科目(数学、英語、フランス語、地理・歴史)が始まり、ほかのフランス人生徒たちよりも帰りが遅くなった。
 フランス人は大抵、大学入学の資格であるバカロレア(BAC)か、中等教育修了の証しのCAPを持っているようで、持っているフランス人は技術試験だけ受ければ良いらしい。
 BACやCAPを持っていない外国人は一般科目も受験する必要がある=一般科目の勉強が必要になる。
 長時間フランス語にさらされるのは精神的にキツイけれど、それも慣れた。


 留学を斡旋してくれた業者さんから
「国家資格を取れる学校に入学できることになりました」
と言われていたので、難しい試験が待っている感があった。
 Wikipediaによると、その国家資格であるCAPは中等教育程度らしい。

 

 確かに、数学は日本での就活で使われている基礎学力テストであるSPIみたいに簡単だった。
 比例・反比例が分かればなんとかなりそうだ。


 しかし、フランス人の考え方や表現というものが(私にとっては)ネックで、それに慣れないと問題を読み間違える。
例えば、「4個150グラムの果物が5ユーロで売っています」という文章だ。
問題には他の選択肢もあり「どの店で買うと安いですか」と問われる。
私はまず、1個37.6グラムあたりの値段を出そうと、5ユーロ÷4個をしたのだが、先生によると、
「4個×150gなのだから、この果物の値段は4個×5ユーロで、20ユーロである」
とのことだった。

 むむむ、、、

 

 英語は、英検3級〜準2級くらいのレベルの口頭試験だ。
問題形式も英検3級〜準2級のような、短い文章の読解。
日本人なら、高校1年生レベルの英語力があれば楽勝といったところか。


 歴史・地理は、決められた4つのテーマの中から一つずつ選んでレポートを作成し、発表するというもの。
 歴史は下記から一つ選ぶ。
1. 大航海時代
2. フランスの大統領制の起こり
3. フランスの労働環境の歴史
4. 世界の戦争(第一次・第二次世界大戦、その他の紛争)

 

 地理は下記から一つ選ぶ。
1. グローバル化
2. 世界の経済格差
3. 世界の食糧問題
4. 国のリスク対応 (災害など)

 

 もちろんフランス語でレポートとプレゼン原稿を書かないといけないのだが、これは最終的に先生が添削してくれるので、安心だ。


 問題はフランス語だ。


 長文読解の問題と、それに対する自分の意見を書くという、日本で言うと国語の問題と小論文の問題がくっついたようなものなのだが、なんと、文学作品や、演劇の台本が出るのである!

 ジュエリー学校に2ヶ月通って、毎日先生の話を聞いたり、同じクラスの生徒のたわいもない雑談を聞いたりして、語学学校にいた時よりはるかに読解力が上がったし、カタコトではあるけどフランス語が口から出るスピードも上がった。

 

 しかし。

 

 文学作品を辞書なしで読めなんて無理!!
 しかも、文学だから比喩がいっぱい。
 先週初めて(CAPでの)このフランス語試験の全貌が明らかになったのだが、絶望。

 

 帰宅して夫に愚痴るも、
「ヒロの言うように各科目の点を合算して平均点で合格が決まるなら、捨てる科目と力入れる科目を分けたら?」
と冷静に言われてしまった。

 

 つい先週くらいまで
中等教育修了の試験なら、各科目満点も夢じゃないんじゃないの?頑張りなよ。」
と煽ってきたのに。

 

さすが現実主義者の夫。

 

 ここ数週間で、
・実は保健の試験もある
・実は技術知識の試験もある
(その科目についてジュエリー学校が提供しているレジュメは64ページあり、金や銀など貴金属が何度で溶けるか等、暗記事項がもちろん全部フランス語で書かれている)

ということを知った。

 

 同じクラスの台湾人も
「なんか、、、試験科目どんどん増えてない?(泣)」
というリアクションだった。

 

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 フランス人はもしかすると
「頑張るのを極度に嫌がる国民なんじゃないか」
と思い始めている。

 

 語学学校で仲良くなった先生は、私のジュエリー学校での波乱を伝えると
「そんなに心配しなさんな。試験落ちたって何とかなるよ。死ぬわけじゃないんだし。もっと気楽に構えなよ。」
と言う。

 

 木曜のデッサンテクニックを担当している親切な先生も、
「ヒロコ、そんなに心配しなさんな。ヒロコのフランス語は悪くないし、一緒に受験する生徒の中には中国人だって、韓国人だっているし。昔、フランス語全く喋れない韓国人生徒がいて、授業中にこっちが確認しても頷くだけだったけど、試験大丈夫だったんだから。」
と言う。

 

 とにかく、フランス人はみんな
パ・ドウ・スシ(“Pas de soucis,”「心配すんな」)
パ・ドウ・パニック(“Pas de panique,” 「落ち着け」)
ばかり言う。


 日本人同士でももちろん似たようなことは言うかもしれないけれど、どっちかというと
「大丈夫だよ。頑張ってね!」
ではないか。

 

 先日、同じクラスの優しい男子グレッグ26歳が、休み時間にしばらく台湾人の女の子と雑談していたが、横でデッサン練習をしている私を見て、
「ヒロコ、大丈夫?そんなに今こん詰めてやることないんじゃないの。家でやればいいじゃん。」
と言う。

 

 そこで台湾人の女の子が
「でもウチら、一般科目の授業で夕方潰れるからあまり時間ないんだよ。」
と言う。
(フランス人生徒はCAPかバカロレア(BAC)を持っていれば、数学等の一般科目はやらなくて良い)

 

もしや追い詰められて「頑張ろうとする」のは私たちがアジア人だから?

 

 グレッグが、
 木曜の先生が、
 元語学学校の先生が、
 私の気持ちを気遣ってくれたのはわかる。

 でも、頑張るのを止められて、違和感を感じてしまった。

 

 

 例えば、大学受験生が勉強頑張っているのを見て、日本人なら
おっ。今日も勉強してるんだね。体調だけは気をつけなよ。頑張ってね!」
と声がけするんじゃないか。

 

 フランス人式に、
大変だねえ。まあさ、そんなに心配しなさんな。落ちてもたいしたことないから。そんなに頑張ることないよ。」
と言うだろうか、、、?

 

 待てよ。

 

 考えてみたら、母方の祖母なら言いそうだな、、、
「今まで子供に「苦しいことからは逃げろ」って教えてきちゃったけど、そればかりでもダメなのよね、最近気がついたわ。」
とか言ってたっけ。

 


 とにかく、

 フランス人は
「いかに頑張らないか」
を重視している気がする。

引き算の人生だ。
多分、逃げれる戦なら、即効逃げるんじゃないか。

 

 日本人は、
「いかに頑張るか」
を重視する。

足し算だ。
逃げれる戦でも、勝つ方法を編み出す。

 

 

 フランスが好きでフランスに暮らしている人は、
「日本人は頑張りすぎ。」
「日本人はもっと力を抜くべき。生活は不便になるけど、それでも何とかやれるから。」
「不便な方が問題解決をしようと頭を使う。日本は便利だから人に主体性がない。」
と言う。

 

 でも頑張ったからこそ日本が発展したわけだし、
 頑張ったからこそ便利な生活があるわけだし、
 (各自が仕事を)頑張るからこそ気持ちよくサービスが受けられる。

 

 もちろん、
 その「頑張る人」をさらに追い込むような会社の文化はもちろん変えるべきだし、
 「頑張る人」を休ませる会社の文化は育むべき。
 社員各自も、自分の心の状態を把握して、心のケアに時間を使えるように工夫すべきだとは思う。


 でも、(フランスのように)人が仕事を頑張らないことにして、

 仕事の質が落ちて世の中が不便になったとして、

 何かうまくいかないことがあった時に
「人々が頑張らないから、受けるサービスもイマイチだけど、まあ仕方ないや。お互い、仕事なんてどーでもいいもんね。」
と受け止めなければいけないとすると、それも極端にネガティブだ。

 

 また、
「(フランスでは)人が頑張らないからサービスが発展しなくて不便だけど、各自不便さを工夫して乗り越えるわけだから、人の自主性が増すのでは。」
という議論は私は個人的に好きじゃない。


 その「不便さ」が「社員のほんの少しの努力」でなくなるなら、なくした方が周りの仕事が回るから最終的にストレスがなくなる。

 

 そもそも人に自主性があるのなら、毎日の生活の小さな不便さを乗り越えるよりも、自分の今後の人生を考えて努力するほうに頭を使った方が良いのでは。
 もし少しでも自ら進んで努力すれば社会は発展するのでは。

「人々の自主性があるのに不便な社会」は矛盾している。


※ここでの「自主性があること」の私にとっての定義は
「自分から進んで物事の対応をすること」
だけれど、もちろん、他の人にとっては別の定義もあるだろうから、一概に私の意見が正しいとも言えない。

 

 

 とにかく、私の中で
「大抵のフランス人はもしや常に脱力思考なのでは」
という疑惑がむくむくと湧いており、個人的には
「その考え方はちょっと好きでないなあ」
と思っている。


 自分は
「何においても全力疾走しかできない、不器用なタイプ」
と思っていたが、結局それが好きなんだろう。

 

 前職では

「無理な距離(無理な仕事量)を全力疾走した(時間と労力をかけた)ため、心肺停止(バーンアウトした)」

的な状況がたくさんあったので、最近は「怠け者」の夫を見習って、ちゃんと遊ぶようにしている。

 

 その証拠に、このブログに2時間かけている(遊びも全力疾走か、、、トホホ)。
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 人の扱いが上手で「自分は努力せず人にやらせる」ウチの夫は、どちらかというとフランス人寄りの気質で、
「頑張って何かを達成した苦労人」
「心に熱いミッションを持っている人」
に憧れている(苦笑)。

 

 そんな夫に
「うわあヒロ、学校の勉強、頑張ってる!すごいすごい!」
と毎日踊らされている私である。

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 12/5(木)から公共交通機関ストライキがあり、パリの電車・バス全て止まるらしい。
 そのストライキが終わる計画はされていないらしい。

 

 近郊に住んでいる私はグーグルマップによると片道1時間強歩けば学校に着く。
 往復2時間半はかかるだろう。 

 この徒歩2時間半って無駄じゃないか。

 

 ストは会社の年金が減ることに対するストらしい。

 他のフランス人は平然に構えている。
 郊外に住んでいて

「学校の最寄り駅まで急行で45分」

みたいな生徒はどうするんだろう。

 

 

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↑先日は授業中に雹が降りました。

 

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